昨日、名古屋高裁金沢支部で、中学生殺害事件の再審開始決定があった。
記事によると、有罪証拠は、2人の目撃証言だけ。その1人は「血のついた服を着ていた前川さん(元被告人)を見た」と言っていた。であれば、前川さんが乗っていた車の中から血痕反応が出るはず。
ところが、有罪判決を下した裁判所には鑑定書は提出されていない。前川さんが終始否認しているのに、高裁は、一審の無罪判決を覆して有罪判決。
再審請求審で裁判所の勧告を受けて検察が出した法医学鑑定書には、前川さんが乗ったとされる車内に血痕反応が認められなかった、とあるそうだ。つまり、警察、検察は、目撃証言と鑑定書が明らかに矛盾することがわかっていながら、再審請求の裁判で裁判所から求められるまで無罪証拠となる鑑定書を隠し続けていたということだ。
検察のコメント:決定内容を慎重に検討し、今後の対応を決定したい。
検討する余地はないと思うけど。この結果は予想していたはず。小役人的発想としては、自分が事件を担当するときに出世の妨げになる「黒星」はほしくないということだろう。小役人的発想で決めるか、ここで新たな道を開くべく決断するか。
福井県警のコメント:県警としてはコメントすべき立場ではない。
よく言うよ。福井県警がした捜査の結果について、再審開始決定を下されたのだから、「冗談じゃない。俺たちはちゃんと捜査したよ。検察には是非、異議申立をしてほしい」とでも言えばいい。でなければ、「私たちの捜査に問題があったことを指摘されたことを重く受けとめる」くらいのことは言うべきだ。
一審無罪判決を軽〜くひっくり返した高裁裁判官たちのコメントがない。是非、聞きたい。元裁判官になっていれば、尚更だ。
それと記事には、前川さん自身が、有罪判決を受け服役中に精神に異常を来たし、今日に至っていること、「長年、家族も苦しんだ」こと、「巻き込まれたのは弟にも原因がある」と話すお姉さんとは絶縁状態が続いていることが、書かれていた。
被害者は前川さんひとりではないのだ。
被害者家族も大変だが、「加害者」(前川さんのように真犯人とは限らない)家族も大変なのだ。
多くの人の人生を狂わせた人たちは、個人としても責任を負うべきだ。国家賠償請求訴訟だと、裁判例では、国や自治体との関係の責任しか認めない。警察官、検察官個人を訴えても、裁判所が「最高裁判例」という壁でブロックし、守ってくれる。彼らはせいぜい証人として出頭するだけで、旅費日当さえ出る。この至れり尽くせりが警察官、検察官の横暴をのさばらせている。
彼らはお互いに「組織でやっているのだから、前例に従うのは当然」という考え方を共有し、それを自己免責の根拠にしている。それを打ち破る必要がある。
本件のように明白な証拠隠しなどの悪質な事案については、幾人関わっていようと、幾代にわたっていようと、関係者全員の個人責任が問われるべきだ。せめて、刑事責任の追及は考えるべきだ。警察、検察の証拠隠しは、証拠隠滅罪(刑法第104条)になるはずだ。有罪証拠を隠すのが犯罪なら、無罪証拠を隠すのも犯罪になるはず。条文には、行為主体を限定していないから、警察、検察が組織的に隠していたなら、それに関わった全員が証拠隠滅罪で処罰されるべきだ。元大阪地検特捜部の元検事らだけが問題なのではない。
彼らはある日、突発的に無罪証拠隠しという大罪を犯すのではない。日常の警察、日常の検察の延長にこのような冤罪はつくられるのだ。
]]>『アリとキリギリス』の童話(?)をなんとなく信じていた。少なくとも、アリは結構働き者なのだとずっと思っていた。
その認識がとんでもない誤りであることを1冊の本で知った。進化生物学者・長谷川英祐著『働かないアリに意義がある』(メディアファクトリー新書)だ。帯の一言、「7割は休んでいて、1割は一生働かない」。これは衝撃的だ。
一瞬、売らんかな主義の大袈裟な表現かと思い、騙されたつもりで、読んだ。
・・・ところが、アリの現実はどうも帯の一言のとおりらしい。働くということがどういうことなのか、考えさせられる。まじめなアリから反乱(?)が起きないのも、なるほどなあという感じがしないでもない。
また、アリは一列に隊列を組んでいろいろなものを運んでいる姿をよく観るが、なんと方向音痴がいるという。実は、子どものころ、夏休み中、家の庭のアリを毎日観ていたことがあり、そんなアリがいることは薄々知っていた。それを学者が、「いる」と言ってくれ、しかも、その存在にちゃんと意味があると指摘しているのがおもしろい。
アリにはどうも言語がないらしい。
それなのに、まじめなアリが反乱を起こすこともなければ、方向音痴のアリが他のアリから蔑まされることもないらしい。それは、それぞれにちゃんと意味があるから。そのことを、言葉を交わさなくても、アリ同士は知っている?
ハリウッド映画『猿の惑星』みたいに、『アリの惑星』が実現するとは思わないけど、人間よりアリの方が知的かもしれない?
]]>しかし、これは現実。
「なにを馬鹿なことを」と思う人こそ、その根拠はなに?と聞きたい。
数年前から、警察官の職場改善を目的とした「明るい警察を実現する全国ネットワーク」という、弁護士や元警察官などを中心とする市民活動を始めた。
そこにはひっきりなしに現場の警察官から、「職務質問のノルマを止めさせてほしい」「任意で取り調べた被疑者の指紋採取や顔写真撮影もノルマになっていて、やりたくない」という嘆きや相談が来る。
この職場環境を現場の警察官の側から変えられないかと考えたこともあったが、現場の警察官にはそんな力はない。そういう力を法律で奪われている。日本の警察官は、欧米の警察官とちがって、労働者として団結することが禁止されているのだ。警察官が団結したら、暴動でも起こすというのか。警察官が団結したら、途端に治安が悪化するというのか。どっちも、現実的ではない。
一般人からも、「警察官から突然声を掛けられて犯罪者にされた」「顔写真を撮られた。指紋を採られた。あれは今後なにに使われるのか。いつまで使われるのか。抹消してもらえないのか」という相談が続々と集まっている。
警察組織を支配する警察官僚は、こんなことをしていて、日本の治安をよくしているつもりかもしれないが、とんでもない。現場の警察官も一般人も被害者なのだ。
これまで、弁護士はこの分野の仕事をして来なかった。
「逮捕されるわけでもなければ、起訴されそうもない。些細なことじゃないか」という感覚があるからだと思う。
しかし、弁護士の仕事として遣り甲斐があるかどうかはわからないが、このことで困っている人がたくさんいるのなら、解決に乗り出さないのはおかしい。
警察ネットでは、最近、この手の事件を積極的に民事裁判(損害賠償請求、個人データ抹消請求など)にしていくことにした。
まだ、被疑者として取調べを受けている段階の人については、弁護人になって、犯罪不成立の供述調書をつくらせるための弁護をすることにしている。
現場の警察官はやりにくくなるだろうが、やれなくなれば、やらなくて済むようになる。そうすれば、それだけ無法者でなくなる。警察官にとっても一般人にとってもいいことだ。
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